旧国名のなかには、京の都からの位置関係を表す名も多い。「陸前」−「陸中」−「陸奥」、「羽前」−「羽後」、「上総」−「下総」、「上野」(上州)−「下野」、「越前」−「越中」−「越後」、「近江」−「遠江」、「丹波」−「丹後」、「備前」−「備中」−「備後」、「筑前」−「筑後」、「豊前」−「豊後」、「肥前」−「肥後」の各党派である。あえて述べるのも野暮かもしれないが、“上”“近”が付く国のほうが京の都に近い。けれども、東京から房総方面に向かう場合、なぜか「下総」の付く駅名が「上総」のそれよりも先に出てくる。「下総中山」や「下総松崎」は「上総一ノ宮」「上総湊」よりも東京・京都寄りにある。実に不思議な現象だ。こういったことまで気になりだすと、鈍行旅行も、とても退屈などしていられなくなってくる。せっかくだから、下総・上総問題の種明かしをする。七〇一年の大宝律令でその領域が定められた五畿七道のうち「東海道」(古代から中世にかけては、行政域と街道の両方を指す名称だった)に属したのは、上方側から伊賀、伊勢、志摩、尾張、三河、近江、駿河、甲斐、伊豆、相模、安房、上総、下総、常陸の一四カ国であった(後に「東山道」から武蔵国が加えられる)。コトの原因は、それらを貫く官道の存在で、当初は相模国から海路で上総国に渡り、下総国を経て、常陸国が終点となっていたのである。こんなことを門外漢の私が知っているのも、以前、鈍行旅行で下総と上総の順番が気になりだし、旅から戻って調べたからという次第。
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